3DKの行動範囲…
3DKの2部屋を同居の住人が占有している場合、住人Mの行動範囲はダイニングの一角と残り1部屋の布団を敷く一畳分のスペースに制限される。野生の動物が自分の縄張りを主張するように住人Mもダイニングの一部に設けた座椅子を自分の専用エリアとし、そこからリモコンを操作しネット動画を閲覧したり電子ブックで読書タイムを送る。
となると、広大な3DKという面積ながら占有部分は極めて小さくダイニングテーブルの一角や玄関付近に設置した作業用の折り畳みテーブル、あるいはベランダの隅にあるキャンプ用椅子に腰掛けることが最大限に許容された行動ルーティンとなる。この極限までスポイルされた状況の中で住人Mの精神は解き放たれることとなる。
深夜、人々が寝静まった細くて長い闇の中を住人Mはまるで3DKの支配者のごとくiPhoneライトで辺りを照らしながら縦横無尽に徘徊するのである。
